新設PT PMA(外資直接投資会社)は、資本金要件(BKPM規則5/2025号)、法人所得税の通常税率適用(2026年政令20号により0.5%の最終課税は新設PTには適用不可)、Coretaxを通じた毎月の税務申告、四半期ごとのLKPM報告、そしてAHUへの年次報告(法務人権省令49/2025号)を遵守する必要があります。資産または年間売上高が500億ルピアに達した場合、公認会計士による監査も義務付けられます。
インドネシアに進出する日系企業の多くは、PT PMA設立後の税務・会計義務が現地の一般的なPT(内資企業)と同様であると想定しがちです。しかし実務上、規制の変更が続いている現在、特に2025年から2026年にかけて複数の重要な制度変更があり、古い情報のまま進めると初年度から誤った前提で資金計画を立ててしまうリスクがあります。
本記事では、PT PMA設立後1年目から適用される税務・会計上の義務について、2026年8月時点の最新規制に基づいて解説します。より詳しい設立要件については PT PMA設立ガイド(インドネシア語版)もご参照ください。
目次
1. 資本金要件(設立後も継続する義務)
投資省/BKPM長官規則第5号(2025年)により、PT PMAの資本要件は以下のように変更されました:
- 払込資本金の最低額は、従来の100億ルピアから25億ルピア(Rp2.5 miliar)に引き下げられました(第26条第9項・第10項)。
- 払込資本金は、払込日から最低12ヶ月間、会社口座に留保する義務があります(第27条第1項)。これは以前は明文化されていなかった規定です。
- 払込資本金の引き下げは、最低投資額の要件には影響しません。KBLI(インドネシア標準産業分類)5桁コード・プロジェクト所在地ごとに、土地・建物を除いて100億ルピアを超える投資額が引き続き求められます(第26条第1項・第2項)。
つまり、実際に口座へ振り込む金額は軽減されましたが、実現すべき投資総額のコミットメントは変わっていません。
2. 法人所得税の重要な変更 — 2026年政令20号
これは日系企業の担当者が最も見落としやすいポイントです。
従来: 2022年政令55号に基づき、新設PT(PT PMAを含む)は最大3年間、売上高の0.5%を最終税として納付する簡易課税制度(PPh Final UMKM)を選択できました。
2026年政令第20号(2026年4月22日発効、2022年政令55号を改正)により、この0.5%の最終課税制度は、個人事業主、1人設立の個人会社(Perseroan Perorangan)、および年間売上高48億ルピア以下の協同組合のみが対象となりました。PT(PT PMAを含む)は、新設法人であっても0.5%の最終課税を選択する権利を失いました。
その結果、2026年4月22日以降に設立されたPT PMAは、以下のいずれかの通常課税方式で法人所得税を計算する必要があります:
- 所得税法第17条に基づく標準税率22%、または
- 所得税法第31E条の優遇措置——年間総売上高500億ルピア以下の国内法人納税者に適用され、標準税率から50%軽減(実効税率11%)される制度。この優遇は年間所得税申告時にチェックするだけで自動的に適用され、別途申請は不要です。
なお、第31E条自体は以前から存在する規定です。2026年政令20号による変更点は、新設PTがこの制度に入る経路——以前のように「まず0.5%から始めて3年目以降に通常税率へ移行する」という選択肢が、新設PT PMAにはもはや存在しないという点です。
3. 毎月の税務申告義務
2024年財務省令81号により実装されたCoretax(税務行政システム)が2025年1月1日から稼働し、税務登録・申告・納付・調査に至るまで、銀行データ・電子インボイス・給与情報・税関データと連携した統合システムで処理されるようになりました。小さな不整合(例:インボイスと給与報告の不一致)もシステム上で検知されやすくなっています。
PT PMAに一般的に適用される毎月の義務:
- 所得税21条(PPh 21)の源泉徴収・申告(現地スタッフおよび給与を受け取る外国人取締役を含む)
- 所得税23条(PPh 23)の源泉徴収・申告(国内取引先へのサービス・賃貸料・ロイヤリティ支払い)
- 所得税26条(PPh 26)の源泉徴収・申告(海外への配当・ロイヤリティ等の支払い)
- 付加価値税(VAT/PPN)——PKP(課税事業者)登録済みの場合
- BPJS(社会保険・労災保険)への従業員登録——給与支払い開始月から義務
4. 年次義務
- 法人所得税確定申告(SPT Tahunan)——課税年度終了後4ヶ月以内(1月~12月決算の場合、通常4月末まで)
- LKPM(投資実現報告)——OSS-RBAシステムを通じて四半期ごとに提出。投資実現額と雇用者数を報告
- AHUへの年次報告——法務人権省令第49号(2025年)第16条第1項に基づき、取締役は監査役会の審査を経た上で、決算日から6ヶ月以内に株主総会(RUPS)へ年次報告を提出する義務があります。これを怠ると、法人登記システム(SABH)へのアクセスがブロックされるリスクがあり、取締役の変更や増資などの手続きが一切できなくなります。
5. いつ公認会計士による監査が必要になるか
法的根拠は2007年会社法第40号第68条です。以下のいずれかに該当する場合、財務諸表は公認会計士による監査を受ける義務があります:
- 公衆から資金を集める、または管理している場合
- 公衆向けの債務証書を発行している場合
- 上場企業(Perseroan Terbuka)である場合
- 国有企業(Persero)である場合
- 資産または年間売上高が500億ルピア以上である場合
この義務を満たさない場合、財務諸表は株主総会で承認されません(第68条第2項)——これは前述のAHUへの年次報告義務にも影響します。
なお、この法的要件とは別に、多くのPT PMAは規模がまだ500億ルピア未満であっても、海外の親会社からの要請で監査を受けています。これはインドネシアの規制上の義務ではなく、親会社側のグループ連結決算や内部統制上の方針によるものですが、実務上は同様に重要な準備事項です。詳しくは PT PMAの監査義務に関する詳細記事(インドネシア語版)もご参照ください。
よくある間違い
- 0.5%の簡易課税を前提に予算を組んでしまう——2026年政令20号による変更を反映していない情報を参照した結果、初年度からキャッシュフロー計画が狂うケース。
- 払込資本金と投資総額を混同する——LKPM報告がOSSに登録した投資計画と整合しなくなる。
- 給与支払い開始月からBPJS登録をしていない——外国人取締役を含む。
- AHUへの年次報告を6ヶ月の期限ギリギリまで先延ばしにする——取締役変更や増資が必要なタイミングでSABHへのアクセスがブロックされる。
- 親会社・関連会社との取引に関する移転価格文書を準備していない——PT PMAの税務調査で最も頻繁に指摘される項目の一つ。
KAP TNNができること
KAP Tambunan & Nasafi(KAP TNN)は、インドネシア財務省およびOJK(金融サービス庁)に登録された公認会計士事務所であり、74カ国以上に会員を持つBOKS International(英国)の independent member でもあります。会社設立代行業者やビザ代行業者とは異なり、KAP TNNは会社法第68条に基づく監査意見を発行する権限を持つ公認会計士事務所です——海外親会社のグループ連結決算にも対応可能です。
新設PT PMAの毎月の記帳代行、Coretaxを通じた税務申告から、年次監査まで、日系企業の親会社側の報告ニーズを理解した上でサポートいたします。
貴社のPT PMAの税務・会計コンプライアンスについてご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
よくある質問(FAQ)
新設PT PMAは0.5%の簡易課税を選択できますか?
いいえ。2026年政令第20号が2026年4月22日に発効して以降、PTはPT PMAを含め、新設法人であっても0.5%の最終課税(簡易課税)を選択する権利がなくなりました。この制度は現在、個人事業主、1人設立の個人会社、および年間売上高48億ルピア以下の協同組合のみに適用されます。
PT PMAの最低払込資本金はいくらですか?
投資省/BKPM長官規則第5号(2025年)により、PT PMAの最低払込資本金は25億ルピアです(従来の100億ルピアから引き下げ)。ただし、最低投資総額はKBLI5桁コード・プロジェクト所在地ごとに、土地・建物を除いて100億ルピアを超える必要があります。
PT PMAはいつ監査が必要になりますか?
2007年会社法第40号第68条に基づき、資産または年間売上高が500億ルピア以上に達した場合、公認会計士による監査が義務付けられます。この基準未満であっても、海外親会社の方針により監査を受けるケースは少なくありません。
PT PMAの毎月の税務申告義務にはどのようなものがありますか?
一般的な義務として、所得税21条(従業員給与)、23条(国内取引)、26条(海外送金)の源泉徴収・申告、およびPKP登録済みの場合の付加価値税申告があり、いずれもCoretaxシステムを通じて処理されます。
LKPMとは何ですか、いつ提出する必要がありますか?
LKPM(投資実現報告)は、OSS-RBAシステムを通じて四半期ごとに提出する、投資実現額と雇用者数に関する報告です。インドネシアにおける外国直接投資の監督制度の一環として義務付けられています。
